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「それじゃ、またね、スガくん」
「うん。またなー」

ひらひらと手を振って、一旦夜久君と離れる。
練習合宿の最終日。
お楽しみ会と交流会含めたバーベキューも終わりに近づき、今度は総出で片付けだ。
食べ物や飲み物はどのセットから取ってもよかったけど、一応それぞれの学校分の網はあったから、音駒のセットを片付けに行く為に夜久君はそっちに戻っていった。

「クロー。研磨ちゃんと食ってたかー?」
「んー? 食ってたよー。なァ?」
「…」

何となく見送っていると、駆け戻りついでに早速集団から離れているあの金髪のセッター君に駆け寄っていく。
彼はウチでいう月島タイプだな。
バーベキュー開始からそんなに楽しんでいなさそうだったの見えてたけど、今も集団から随分離れた体育館ドア前の階段に腰を下ろしていた。
遠目に、その膝の上に紙皿があるのを見つけて、あんまり関係ない俺も小さく肩を下ろした。
あの後輩君、あんまり体調管理とか何かする意欲とか、得意だったり豊富な方じゃないみたいで、話してる間も夜久君ずっと心配してたもんな。
一緒にいると、お互いチームメイトの心配話しかしないんだから、何かもう我らながら"なんだコレ"感。
…けど、心配ないか。
セッター君の横、ちゃんと向こうの主将が付いてるみたいだし。
"クロ"が傍にいる分には心配ないというのが、夜久君の言い分。
仲いいんだな。
なんでも、いっこ違いの幼馴染みだとかで。
…月島でいうところの山口なんだろーなぁ。
月島自身の気分や体調が分かりづらくても、それを察知して横で彼の心配してくれる山口がいるのといないのじゃ、全然違う。
…ま、随分フォロー役のウエイトが違うみたいだけど。

「…お?」
「…!」

不意に視線を感じて、くるっと左を向く。
微妙な間を空けて立っていた大地が、一瞬ぴくっと眉を寄せたかと思うと、さっと目を反らした。
…いや、何で目ぇ反らす?
疑問に思いつつも、てててと敢えて普通に寄っていく。

「お疲れ、大地。バーベキューうまかったなー。ぼちぼち片付しとくべ~」
「ああ。そうだな、そろそろ」
「…? どうかした?」

分かり易く疑問符を浮かべて首を傾げてみると、あーとかいや…とか言った挙げ句に、首の横に片手を添えて、歩きながら口を開いた。

「音駒のリベロと、随分仲良くなったんだなと思ってさ」
「ああ、夜久君ね。…そう、すげーいい奴なんだよ。前にメアド交換しててさ、今日久し振りに会ったから、お互い話つきなくてさー。音駒も問題児多いみたいだよ。どこも大変だよな。やっぱ個性違う奴らが集まるわけだし」
「へえ…。そうか。良かったな」
「そー。いいだろー」
「ああ、いいな。そういう、他校との交流って大切だよな」
「…」
「…」
「ぶっ…!…っぶふ!」

我慢しようと思ったけど、耐えきれずに思わず吹き出す。
左手の甲を口元に当ててくつくつ笑う俺を、並んで歩いていた大地は驚いた顔で見た。

「おいスガ…。何だよ。急に」
「いや、だって…。大地超分かり易いんだもん!」
「は?」
「いや。いやいやいや、悪い。ごめん、からかうつもりないんだ」
「…!」

一度軽く片手を上げて制してから、ずいっと横を歩く大地に肩を寄せる。
びくりと大地が一瞬身を引いたけど、そこまで逃げない。
顔を寄せて、上目にこそっと声をひそめる。

「…放置しちゃってごめんな」
「…」
「嫉妬してくれちゃった? 頑張ってるんだろうけど、顔恐いぞ~?」
「…。悪いか?」
「あはは。いんやー?」

少しぎくっとした後、むっとした顔で白状した大地から離れ、並びを普通に戻す。
…やばい。
超嬉しくて、顔がにやにやする。
にやける俺と違って、大地は照れたり嬉しかったりするとなかなか素直に笑ってくれず、むっとした顔になってしまうことが多いから、今もちょっとむっとした顔をしている。
でも、耳すげー赤いから、すぐ分かるけどね。
…本当、俺らすごい幼稚なんですけど。
付き合いたてなんて、こんなものなのかな…なんてね。
個性的で有望な一年が入って、うちの部活は光に向かって急激に羽ばたきだした。
ノヤが来て、旭も戻って来て、波が起きて…俺たちもちょっとだけ変わった。
てっきり経験豊富で包容力あると思っていた大地は、割と奥手で生真面目で……て、その辺は印象通りといえば通りか。
…ま、そんなこんなでスローペースだから、嫉妬一つが思いの外嬉しかったりして。
少し離れた場所でゴミを回収している清水を見つけて、大地の手から空いた紙皿と割り箸を奪って、一歩先へ出て、肩越しに振り返る。

「帰り、バス。隣に座ろーぜい」
「…ああ」

控えめな微笑に胸がいっぱいになって、にーっと大地に笑いかけてから清水の方へ足早に向かう。
進める足も軽やかだ。
…見慣れた笑顔一つでこの威力。
やばいな、恋愛。
舐めてたわ、俺。
俺の為に大地が嫉妬とか…笑っちゃう。
けど、すごく嬉しい。
あの焦り顔。
あと照れ顔。
もっと見たいなって、思ってしまうあたり…。

(うーん…。性格、悪いかも。俺)

自己反省。
あんまり気にしたことないけど、俺S気味だったらどうしよう。
大地可哀想。
絶対真面目だから。

宜しくお願いします




気が逸っているからか、ただゴミを捨てに行くだけなのに、やけに足早に駆け出した。



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烏野の主将澤村さんと副部長の菅原さん。
菅原さん超美人。しかも優しい。
今の所、出てきた人物で一番美人だと思います。
美人で優しい人のちょいSはすごくいい。
2014.10.2





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