一覧へ戻る


「…享介君、顔色悪くない?」

 

そんな監督の声が聞こえてきて、衣装さんに見てもらってる途中で振り返った。
少し離れたテント下で監督と打ち合わせしてたのは享介だ。
丁度採寸が終わって、オレもそっちへ駆けていくと、ひょいっと監督の後ろから顔を出した。

「二人とも、どうかした?」
「あ、悠介君お疲れ様」
「悠介、採寸終わった?」

戻って来たオレに二人とも気づいて、ぱっと笑顔を向けてくれる。
折りたたみのイスに座ってた享介が立ち上がって、何気なく右腕を上げたから、オレも反射的に同じ動作をする。
肩くらいの位置で、パンッ…!と手を打ち付けると、にっと享介が笑う。

「じゃ、順番だから次俺行ってくるね」
「おう。行ってら~」

ひらひら手を振ってさっきオレがいたテントへ向かって歩いてく享介に手を振る。
その更に向こう側は、距離があるけど崖っぷちで、そんでもってその下は海だ。
青い空、海、崖っぷちに気持ちいい風。
海鳥がずっと向こうでミャーミャー鳴いてる。
アップテンポが売りなオレたちだからさ、この景色とかは今度の新曲PVのロケーションにぴったりだよな!
昨日から明日まで。泊まりでの仕事は新鮮で好きっ。
もちろん仕事はしっかりやるけどさ、それ以外は合宿みたいだし。
亨介がテントから離れてから監督を振り返ると、微妙に困ったような顔をしていた。

「監督、どうしたの?」
「享介君がね、ちょっと顔色悪い気がして」
「へ~。そう?」
「でも、聞いたらそんなことないって。…気のせいかな?」

頬に手を添えて心配そうな監督。
オレは肩をすくめて笑ってみることにした。

「だーいじょうぶだよ、監督!享介の体調悪かったら、絶対オレの方が先に気づけるから。…ねえっ、それよりさ、PVのダンスちょっと見てくれない? 享介が考えてくれたパターンが二つあってさ、まだ決まってないんだ。この後享介が振り付けの人と相談するんだけど、参考に意見聞かせてよ。まず一つ目がこれ。見ててね!」

一足先に家で決めてきたステップを披露するために監督から離れてテントの外に出る。
何とか監督の注意をそらしてもらおうと思って言ってみたけど、上手くいったみたい。
真面目に見ててくれて、あれこれ意見もらえちゃった。
監督はすぐまた別の人に呼ばれて行っちゃって、戻って来た享介が次に振り付けさんの所に行くまでにさっき監督が言ってくれた意見をあれこれ伝えると、助かるって言ってくれた。
確かに、その顔はほんのちょっと疲れてる。
分かってるんだけど……でも、今回は泊まりは実質二晩だけだし。
サッカーやってた合宿の時もだけど、今まで、まだこのくらいで気づく人っていなかったんだけどな。
監督すごいな。
…う~ん。でも…。

「…監督相手でもバレちゃってるっていうなら、やっぱり一緒がいいのかも」

行っちゃった享介の背中を見ながら一人真剣に腕を組む。
普通の人は殆ど気づかないんだけど、今日の享介は体調が悪い。
それで、オレはその原因を知っている。
このまま行くと、最終日の明日はもうちょっと悪くなるかもしれない。
けど…。
…。

「う~ん…」

つらつら考えてみても、考えること苦手なオレにはちょっと向かない。
…ま、いいか。
難しく考えなくても、オレにできることを行動すればいいんだよな。
享介が"そこまでしなくていい"って言えばそれまでだし、"いいよ"って言ってくれればいいけどな…。

 

地方ロケの宿泊先。
スポンサーさんの持ってるホテルを使わせてもらえることになってて、よくツインルームを使うオレたちにも一部屋ずつ監督が割り振ってくれた。
これが実はちょっと珍しいことで、よくしてくれてとっても嬉しい。
一人でのびのび使える…っていうのは、間違ってはいないんだ。
でも――…。

 

 

 

 

 

おいしいご飯食べてお風呂から上がって、二人揃って自室へ戻る。
もう最高!

「大浴場気持ちよかったー!」
「うん。檜風呂いいよな。俺も好き。平日で人少ないのも助かったね」
「大きいお風呂大好き。すっげー気持ちいい! …あ、そうだ」

ご飯食べたあたりからすっかり頭から抜け落ちてたけど、今思い出した。
忘れないうちに言っとこう。
出てすぐのところにあった自動販売機のアイス食べ歩きながら、隣でペットボトルの飲み物片手に持ってる享介を向いた。

「なっ、享介。やっぱさ、今回も同じ部屋で寝ない?」

ぺたぺた歩きながら、少し体を傾けて享介を覗き込みながら言ってみる。
享介は何言ってんだって顔でオレを笑った。

「何だよそれ。折角監督が二部屋取ってくれたのに、それじゃ意味なくなるだろ」
「そーなんだけどさ~。だってオレ、朝一人じゃ起きられなさそーなんだよね。…ほら、今日だって享介起こしてくれなかったらちょっとピンチだっただろ?」

家にいる時もそうなんだけど、大体享介が起こしに来てくれるから全然自分じゃ起きなくなってるんだよな。
今朝だって、もし享介がドアを叩いてくれなかったら、あと監督がいなかったら、オレ遅刻だったかも。
サッカーの合宿の時とかもそうだったし、今のところ別に遅刻魔じゃないんだけどさ、部屋別々にされると途端に怪しくなるのは確かなんだよね。

「心配しなくても、明日も起こしてあげるって」
「でもさー、今まで一緒だったんだし、いいだろ? 最近、仕事では部屋一緒だったから、違和感あるんだよね」
「まあ、それはあるけどさ」
「だろ? …あ、ねえ。それ一口ちょーだい」
「ああ…。ん」
「あ、待って待って。アイス持ってるから開けてからちょーだい」

享介の持ってるジュースを受け取って、一口飲む。
炭酸シュワシュワ。
乾いてた喉が、アイスの冷たさとはまた違う感じで満たされていく。
満足してまたそれを享介に返すと、享介もそれを飲む。
きゅっとボトルの口を締めて、肩をすくめた。

「仕方ないなぁ…。じゃあ、一度戻ってそっち行くから」
「OK。じゃ、鍵開けて待ってる!」
「鍵はかけといてってば。悠介、ドア開ける前に相手確かめてから開ける癖つけないとダメだよ」
「平気だって。オレの部屋なんて誰も来ないよ」

鍵あれこれはまあいいとして、享介が来てくれるって話を聞いてほっとした。
一旦分かれてそれぞれの部屋に戻って、濡れたタオルを適当なところに引っかけて広げてみたり、すっかり習慣づいてる柔軟している間にドアがノックされて、思ったより早く享介が来てくれた。
すぐドアに駆けていって、ばっと笑顔でドアを開ける。

「享介、早かったな!」
「やりなおーし!」
「えっ…!」

せっかく開けたドアを、享介がバタンと閉める。
えっ!何で!?
意味が分からなくて驚いていると、ドアの向こうから享介の声がする。

『悠介、ちゃんとスコープから相手見る』
「ええ~…?」

理由が分かって、がくりと肩を落とした。
さっきの話か…。お風呂から戻ってきた時の。
誰も何も、享介じゃん…。
確かめる必要ないのに…と思いながらも、言われた通りドアに着いてる穴から外を見る。
……うん。
享介だよ。知ってる。

「うー…。見たよぉー」
『ちゃんと見てる? 俺の右手何の形でしょう?』
「キツネー」

穴越しに見る享介が右手でキツネ作ってるから答えると、「ハイ、いいよー」なんて声がかかった。
改めてドアを開けると、改めて枕を持った享介が立っていた。

「お邪魔しまーす」
「ねー、今の必要~?」
「必要だし重要だよ」
「そーかなあ~…」
「ドアを開けたらオオカミかもしれないじゃん? 今日はキツネだったけど」
「あははっ!ないわ~!」
「いや、あるんだって。ちゃんと鍵かけないと喰われちゃうよ。今のご時世、物騒だから。馬鹿も多いし」
「だとしてもいきなりオオカミは来ないだろ」
「…ま、俺が一緒に中にいる分にはいいんだけどさ」

そう言って、中に入った享介が鍵をかけてくれる。
あとその上にあったチェーンみたいなやつ。オレ、それかけかたすら分かんないや。
二人で笑いながら奥へ戻る。
どっちも一人部屋だし、享介の部屋と全然変わらないと思うしそこまで広くないけど、でもやっぱり享介いるだけでさっきとちょっと違う感じ。
がらんとした広さはなくなってるけど、こっちの方が全然落ち着く。

「まーた散らかしてる」
「えー? きれいじゃん」
「ふーん…。俺の部屋と左右対称だね」

一つあるベッドの左右にそれぞれまわって傍に立つと、享介が苦笑する。

「流石に狭げ?」
「そう? 全然じゃない? くっついて寝れば平気だって」

枕を横に寄せて、ばすばす叩いて馴染ませる。
オレの反対側では、空いたスペースに享介が自分の所から持ってきた枕を置いていた。
ばっさと布団を開いて、早速二人で横になる。
もう今日は疲れたしね。
確かに元々一人用だからちょっとだけ狭い。
左側は享介と肩が触れ…はしないけど、ほんのり温かさを感じるくらいの距離。
流石に知らない人とか他の人とか相手だったら気を遣っちゃって無理かもしれないけどさ、オレと享介なら全然いいでしょ。
ついついいつもの癖で布団に入りながら携帯を弄り出すと、享介が注意してくる。

「…悠介。寝る前三十分は携帯弄らない。視力落ちるよ」
「う…。わ、分かってるって…」
「悠介は折角目がいいんだから、俺の分も大切にしてよ」

そう言いながら、享介は眼鏡を取って邪魔な横髪を払うように少しだけ頭を振った。
畳んでベッドヘッドに置かれた眼鏡は、オレにはなくて享介にあるアイテムだ。
いつもは気にならないけど、シーツに頬杖着いて思わず眺めてしまう。

「でもさ、眼鏡も格好いいよな。享介に似合ってるし」
「悠介と違って知的だからねー」
「あー、何だよそれー!」
「いって…!」

枕の端っこを掴んでを冗談半分で享介を叩くと、享介もわざと痛がる振りをしたから二人してげらげら笑っちゃった。
あとは、寝る前にお互い少し今日の出来事を話す。
いつもなら家のリビングかどっちかの部屋であれこれ話すことを、こうやって同じ布団にもぐってすぐ隣で話したり聞いたりするのって、特別感があってすごく楽しい。
家にいる時は一緒の布団でなんて寝ないし、最近は家族旅行なんかも全然しない。
行ってももちろん今日みたいな理由がないと、ツインのベッドで寝ることは多いけど同じ布団なんかで寝ないから、やっぱり今日は特別だな。
たまにはいいかも。
…とか調子に乗ってるとすーぐ寝不足。
睡眠ってさ、ホント大切なんだよな。
今はもうそんなに感じなくなったけど、サッカーやってた時は睡眠時間で本当に体の回復が違うし、次の日のコンディションや数字も全然違ってくる。
今だって結構体力勝負なところあるけど、とはいえ現役の時みたいに底値見えてくるまでフルで使い切らないけど……今度はクマががなー。
目の下に出てくるやつ。
今まで気にしたことなかったんだけど、メイクさんに「ちゃんと寝て!」って言われちゃったことあるから、それからノルマみたいにちゃんと享介が逆算して教えてくれる時間にはなるべく寝るようにはしている。
…てわけで、今日もやっぱり案の定の時間で享介が話を切った。

「さて、と…。そろそろ寝ようか」
「はぁーい…」

今夜はすごく楽しいからもうちょっといいかな…なんて思ったけど、やっぱダメか…。だよな。
ベッドヘッドについてるボタンのスイッチに指を添える。

「じゃ、電気消すよー」
「いいよー」

ぽち、と押すと明かりが消える。
けど、一番小さいやつだけ残ってるからぼんやり薄暗いって感じだ。
仰向けになって、やれやれと体を休めるとそれだけで気持ちよくてうとうとしてくる。
布団の中で左右にぽいと投げ出した両手のうち、左手が享介の指に当たった。
お互いくすりと笑っちゃう。

「せっま」
「だよな。もーいいじゃん。いっそ手握っちゃうとか!」
「え~。悠介マジで言ってんの?」
「マジマジ!」

ノリでぎゅっと享介の手を握ると、一瞬懐かしいなって思った。
繋ぐまで忘れてたけど……何かオレたち、小さい頃こうして寝てたっけ。
薄暗い中、枕の上で頭を享介の方へ向ける。
享介もそうしてた。

「なんかさ、小学校の時みたいじゃない?」
「うん。俺も今思った」
「二段ベッドだったけど、いつも一緒の方で寝てたよな。あれ二段ベッドの意味なかったー」
「小五の時くらいに一人部屋用意してくれたけど…。ギャン泣きだった気がする」
「そうそう。享介がね」
「悠介だろ」
「えー。うそだぁー。オレ享介が泣いてる記憶しかないし」
「うわー。都合いいー」
「えっ、ガチの話? そうだっけ!?」

享介の言葉に必死に思い出そうとしてみても、やっぱりオレの記憶にぼんやりあるのは享介が泣いている映像しかない。
…って、そりゃそうか。映像は享介のしかないよな、オレは自分じゃ自分のこと見られないし。
たぶん二人で泣いてたんだろう。
一人部屋への憧れはあったけど…何ていうんだろうな…"一人部屋"は欲しかったけど、そこで使われてる"一人"って単語の中に詰まってるのが"オレと享介"だったんだよな。
だから正確には、オレは二人部屋が欲しかったんだと思う。
それならそれまでの部屋まんまじゃんって話なんだけど…。
ほんと、小さい頃のオレは一体何をどうしたかったのか…うーん、謎だ。
まあ、小さい子が考えることだし、きっとぼんやりしてたんだろうな。
会話が一度落ち着いて、静かになるとうとうとしてくる。
自然と目を伏せた。

「…悠介、サンキュ」

静かな中で、享介の声がした。
それだけで何のことか分かったけど、そんな改まってお礼言われることじゃないし。
気にしないでよって気持ちでしらばっくれてみる。

「んー?」
「今日、監督に顔色悪いって言われたんだ。一晩だけなのに、あの人ぽやっとしててもやっぱり目聡いよね。俺たちのこと本当によく見てくれてる。…ここだけの話ね。本当はさ、眠れなかったんだ。昨日」
「わーかってる。知ってるよ。享介、枕変わったり場所変わったりすると眠れないもんな」

目を閉じたまま口だけ開いて応える。
享介はオレと違って繊細だ。
オレなんか、とにかく横になれる場所があれば布団だろうがベッドだろうが枕なしだろうが、何ならロッカーで座って寄りかかっても眠れる。
けど、享介はあんまり場所が変わるの得意じゃ――…。
…。
…ん?
あれ?
でも、そーいやロッカーで一緒に爆睡したこととか、雑魚寝とかは平気だったかも。
なんか、そんな記憶があるにはあるけど…でも享介はたぶん枕変わると眠れない派だった気がする。
合宿なんかの時は、いつもちょっと寝不足気味って言ってたし。
考えている間に、また享介が言ってくる。

「悠介は全然平気だよな。どこでも、誰といても誰といなくても眠れる」
「えへへ、まーね!」

いいだろ~。
褒めてもらえたと思って、にっと享介に笑いかける。
でも、享介はほんの少し笑っただけだった。
しかも、何かちょっと困ったようなそんな笑顔だ。
一瞬「ん?」って思ったけど、その間に享介は一度目を伏せて諦めたような息を吐いた。

「でも俺はそうじゃないから。あんまり馴染まない場所とか人って、そんなに得意じゃないんだよね。…あ、嫌いなわけじゃないからね? 得意じゃないと嫌いって違うから」
「うん。分かってる」
「うん。…でもさ」

握っていた手の指へ、く…っと享介が力を入れる。

「こうしてさ。悠介がいれば、そこが俺のホームって感じ」

握った手といい、しみじみ呟くような言葉といい……何か、いつもの享介らしくないような気もする。
急にちょっと知らない雰囲気というか…。
ついついぼんやり返事をしてしまった。
…?
何だろう。
本気で体調悪いのかな。
でも、享介が体調悪い時ってオレ結構気づけるんだけど、今そーゆー感じじゃないし。
ちょっともやもやが残るけど、今の言葉はもちろん嬉しい。
オレだって、享介のいるところがホームだ。
遠征の時とか、遠くで仕事の時とかもさ、享介がいてくれるから全然こわくないっていうか。
やっぱり、考えることは同じだよな。
さっきちょっと「?」ってなったけど、改めて享介に笑いかける。

「そんなの、オレも一緒だよ。オレも享介がホーム!」
「さーて、どーだろー。一緒かなぁ?」
「…へ?」

てっきり「なっ」って話になると思ったのに、急に享介が裏切って何故か半眼で悪戯っぽくオレを見返してくる。
すぐ鼻先にある鏡みたいな享介の顔に、ますます分からなくなる。

「え、何で何で? 一緒じゃんっ」
「ま、そーゆーことにしといてあげる」
「しといてあげる、じゃなくて、どー考えても一緒だし!」
「はいはい、一緒一緒」
「はあ~? 享介なんか隠してるだろ!」
「してないって。いーからもう寝ようよ」
「むー…」

何が違うのか全然分かんなかったけど、結局うやむやのまま睡眠が勝ってきてしまった。
結局手は握ったままだけど、今更離すのもめんどいしいいや。
どうせ寝てる間に離すだろうし。
やっぱり一人よりも二人で寝る方が温かいみたいで、ぽかぽかしてるし隣の息づかいとかが余計に眠くなってくる。
だんだん呼吸がゆっくりしてきて、体から力が抜けてくる。
…。

「……ギャン泣きしてたの、本当は俺だよ」
「…ん~…?」

ぽつ…と享介が何か言った気がして、目を擦ってからぽやっとちょっとだけ開ける。
同じように、少し眠そうな享介と目が合った。
…眠い。

「…きょーすけ、いまなんか言った?」
「あ…。起きてた? おやすみって言った」
「あぁ…。うん…」
「ごめん…。起こす気なかった」
「んー…。ヘーキ。すぐ寝るから。…享介、眠れそう?」
「今日は絶対平気。心配しないでいいよ」
「ふーん…」
「…!」

ふぁ…とあくびする。
布団の中で何気なく動かした足が享介の足に当たったから、何となく享介の片足首を両足で挟んで掴まえた。
急で驚いたのか、享介がびくっとする。
オレの方がちょっと冷たいもんね、足。
一瞬置いて、享介が笑ったのが耳で聞こえた。

「…悠介のばーか」
「えへへ」

眠気に負けそうになりつつ、オレもにっと笑いかける。
でももう限界。眠い。
眠りモードになった瞼は重くてこれ以上開けてらんない。

「おやすみ、享介」
「…おやすみ、悠介」

ぎゅっと手を握って目を閉じて、あとはもう暗転。
元々寝付きはいい方だけど、享介と一緒だったからか最速並にすぐに眠りこけた。
狭さなんて全然気にならない。
オレひっつき性なのかな。
だって寧ろこれくらいの距離の方がやっぱり今でも安心するし嬉しい――…とか言ったら、流石にキモいのかも。
でもほら、ぬいぐるみをぎゅ~!ってやりたくなる時ってあるじゃん。
何かあれの感覚っていうかさ。
たぶんオレと享介ってそんな感じな気がする。
普通の兄弟だともう一緒に寝たりとかってあんまりしないらしいけど、オレは全然いいな。
逆に、ある日突然ひょーいっていつもみたいに抱きついて「やだ」って言われたら、泣くかも。
享介は苦手って言ってるけど、オレは享介と遠征行くの好きだな。
だって享介と色々見られるし。
同じ部屋で寝るってことはさ、今日最後におやすみを言い合えるのが享介だし、起きてすぐ最初に顔見られるのも享介って話だ。
それって最近なかったから、今から楽しみ。


明日も一緒ずっと一緒




オレこれ、今日絶対いい夢見る自信ある。
いい夢見たら、明日起きてすぐ忘れないうちに享介に教えてあげようっと!



一覧へ戻る


双子のおにーちゃん悠介君視点。
the双子!という仲良しっぷりが好きっ。
Mマスキャラは本当にみんな可愛いっす。
2016.12.23





inserted by FC2 system