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遠くで鳥の鳴く声がする…。
微睡みの中でそれを聞いて、ふ…と意識が眠りの淵から浮いた。
すぐに目を開けようとしかけ、はたと気付いてすぐに視界を開くのを止める。
数秒間、ある種の覚悟をしてから、ぐっと一度強く目を瞑り、それからそろりと…片目を開けた。

「……」
「…z」

覗き見るように隣へ視線を投げ、そこに俯せと横向きの中間みたいな格好で寝ている日本を捕らえる。
寝る時の癖なのか、布団自体は割りと胸元じゃなくてこうして肩までかけて寝ることが多いらしいが、寝ているうちに潜ってったのか、今は首…というか顎下まで布団をかぶっていた。
暫く見て呆けた後、ゆっくり息を吐く。
昨日の記憶を探ってみる。
かなり自分に都合のいいぼんやりしたものしかないから夢だろうとは思っていたが…。
どうやら、夢じゃないらしい…。

「…」

安堵と曖昧な感情半々と、それを合わせたものと同じくらいの嬉しさに右腕一方布団から出して音にならない本当に小さなガッツポーズを誰とも無しにしてみる。
壁にかかっている時計を見るとまだ朝の4時を少し過ぎたところだった。
こんなに早く起きるなんて奇跡に近い。
仰向けだった体を返して、寝ている日本を向かい合うように布団の中を動いて、正面にある寝顔を堪能することにしておく。
…本当、こいつって小さいんだよな。
寝顔だと更に幼く見える。
腕回すと分かるが、すっぽり収まるし。
白いシーツに広がる黒い髪ってのはなかなか綺麗で、俺が好きな所のひとつだ。
…。
ま、まあ他にも色々あるわけだからこうして家に呼んでやったりなんかしてやっている訳だが…。
誰が見てる訳でもないのに反射的に言い訳してからも、またじっと日本を見る。
…駄目だな、甘いな。
俺ん家の近所じゃかなり言わせてる方なんだが、なまじ距離があるからか、礼儀は欠かないものの日本には何というか…俺を変に意識も恐がりもせず、卑屈さを感じない。
要するに、気に入っている訳だ。
とは言え、昨日一昨日と連れ回しすぎたか。
たまにこうして来てくれたりすると見せたいことや勧めたいことが多すぎて、少し引っ張り回した感がある。
そりゃ、同じ島国でも日本の方が多少家は広いが、文化の多彩さで言ったら俺の方が豊富だからな。
俺の家案内できる機会なんて限られてるし、米国とかの方がこいつと仲いいからこう…妙に焦るんだよな。
今日はネス湖まで行ってネッシーの奴を紹介してやろうと思ってたんだが…。
日本は疲れてるし、あいつも結構人見知りだしな。
中止して、今日は家で過ごすことにしてやるか。
…。

「…絶対甘いよな、俺」

どうも日本相手だと色んな事が緩む。
かなり気合い入れて観光の計画だって練りに練って徹夜までしたのに、その苦労をこんな寝顔一つで捨てられるんだもんな。
自分にため息つきながら片手を伸ばし、調子に乗って邪魔そうな日本の前髪を指先で梳いてやった。
途端。

「…ん」

日本が小さく身動ぎして顔を顰め、ぎょっとして指先を引っ込めた。
数秒後、片手の指先を目元に添えて、実にゆるやかに日本がぼんやりと目を開けた。

「よ、よう…!」
「…」
「その…良い朝だな…」

言いながら、日本を引き寄せようと一度引いた片腕を改めて伸ばす。
そういう関係になったのなら翌朝のキスとハグは欠かせるはずがない。
ところが、布団の下で肩に手を置いて顔を近づけた途端、今までぼんやりしていた日本が明らかに覚醒し、キスしようとした俺の顔をがしっと片手で受け止めた。

「ちょ…!いきなり何をなさるんですか…!」
「はあ!?何でってお前…。翌朝のキスは当然だろ!?」

ここにきてごねるか、普通!
文化の違いがあるかもしれねーけどここは悪いが通させてもらうぞ!
苛々しながら俺を押しのけている日本の手首を掴んで俺の顔から引き剥がすと同時に、無理矢理その背中に手を回して引き寄せる。

「や、止めて下さい…!ちょっと何す…っうわ!!」

   __じゃら。

日本を引っ張った途端、妙な金属音が響いた。
…ん?

「じゃら?…って、何だ今の音ぉうあぁああああああぁああっ!!? 日本…!?お前それな…むぐっ!?」
「大声出さないでください…!」

思わず悲鳴を上げた俺の口を慌てて日本が塞ぐ。
その拍子にまたさっきと同じジャラリと金属が連なる音が鳴った。
口元に添えられた朝冷えした手に一応我に返るが、冷静になればなる程目の前の異様な光景に混乱してくる。
日本の細い首に冷たそうな銀色チェーン。
犬にそうするように小さな輪を作り首輪の如く絡んでいて、中央にロザリオが下がっていた。
慌てて身を起こす。

「な、何だよこれ…!大丈夫か、日本!?」
「物凄く人ごとにしてますけど英国さんがなさったのですが」
「は!?俺…!!?」
「昨晩、泥酔とまではいかずとも酔ってらしたのでお眠りになるのでしたらとお部屋にお連れしましたら、そこから…」

と、日本がベッドの端に添え置かれている棚を指さした。
次いで、自分の首にかかっているチェーンを指先で示す。

「これを」
「……」

…思いだした。
そう言や昨日俺結構飲んだんだ。
飲んでる途中の記憶から、次の記憶はいきなりこのベッドで日本にくっついてた記憶になっている。
日本と視線を合わせないようにして首周りの輪から伸びている鎖の端を探すと、シーツの上を少し滑った後、ベッドヘッドの端にある飾り細工の輪にかかっており、ご丁寧にぐるぐる巻きにして解けなくしてあった。
酔っていたとは言え、正直これはない…。

「抱き枕がどうとか言って暫くぐずっておいででしたので、寝るまで一緒にいるお約束はしましたが…」
「…。…すまん」

がっくり首を項垂れ、片手で顔を覆う。
…ああ、何かまた海に出て暴れ出したい気分だ。
誰でもいいからボコりたい。
羞恥にかあーっと顔が熱くなり、目尻にうっすら朝露が…。
…最悪だ、俺。
何つーかもう…もっと格好良い俺でいたかった…。

「あの…。もう良いですから。取って頂ければ」
「え?あ、ああ。それは勿論…」

俺が沈んでいたのに気づき、日本がシーツの上で仰向けに返った。
うっかり目を合わせてしまい、そこではたっと現状の妖艶さに気付いて思わず固まる。
一晩経って皺ができたシーツの上に、布団が邪魔で覗けるのは上半身だけとはいえ細い肢体。
しかも首にロザリオ付きのチェーンときてる。
それに白い指を添えていた。

「流石に冷たいので早めに…。…イギリスさん?」
「え!?…あ、お、ぉぉおう!取る取る!」

両手を伸ばして、銀色の飾りがついている日本の首に手を伸ばすと、控えめに日本は目を伏せて顎をあげた。
その顔に見取れそうになるが、首を振ってチェーンを外すことに専念する。

「あ、何だこれ…っ。くそ、固いな…!」
「私も明け方まで試みたのですが、思いの外どちらも固くて。…失礼」

横を向いて、日本が手を添え眠たげに欠伸をする。
目元に滲んだ涙を指の背で拭って、ゆっくり瞬きした。
その何気ない行動…と言うか雰囲気か?
…に目を奪われ、思わず指先を止める。
俺の視線に気付いた日本がこっちを見上げ…はせず、微妙にずれた場所へ視線を向ける。
…何か、違和感が。
そう言えば起きてから一度も視線を合わせないような…。
…。

「…なあ、日本」
「はい」
「変なこと聞くが…」
「なら聞かないでくださ」
「俺昨晩お前とやっ…ぶっ!?」

ばちんっと飛んできた枕に顔面を打たれ、強制的に質問終了。
ぼとっとシーツの上に枕が落ちた後で視界が開けたが、その頃には仰向けだった布団の中にもぐり込んでしまっていた。
黒髪だけがちょこっと覗ける。

「や、やったとか…やらないとか…。不愉快です、その言い方」
「お、おい…?」
「やってません。繋がれてしまったので、寝台の端をお借りしただけです」
「にしては…」

さっき首筋とか鎖骨にキスマークがあったよーな気がするんだが…。

「酔われてらしたので、抱き枕代わりにされて…さ、触られは…しましたけど」
「……」
「どうせ覚えていらっしゃらないのでしょう。いいですよ、も……っ!?」

突然枕を掴んでズダン…ッ!と壁に全力で叩き付けた音に驚いて、日本が肩を振るわせ少しだけ顔を覗かせた。
俺はと言うと枕をぶん投げた後、両手をベッドについて、シーツを力一杯握り締め脱力していた。
き、昨日の俺ぇええええーっ!
可能ならば張り倒したい…!!!

「い、イギリスさん…?」

四つん這いになって項垂れていた俺が心配になったのか、チェーンの音を立てて日本が漸く身を起こし、俺の肩に片手を添えた。
その手首を反射的に掴み取る。

「…やり直しを要求する」
「え…。…ぇえええ!?い、嫌です!何を馬鹿なことを…!」
「うるせえっ!覚えてないし、俺がお前のこと雑に扱ってると思われたくないんだよ!」
「思われたくないって誰にですか…!」
「お前に決まってんだろーっ!!」
「うわ…っ」

ぎゃあぎゃあ叫きながらも、首を振ってすぐに逃げようとした日本の手首をそのまま引っ張り、投げ飛ばすようにベッドに仰向けに倒す。
ぼん…っと、一度大きくベッドのスプリング鳴って日本が倒れ込んだ。

「ちょ…。雑っ。雑じゃないですか既に!」
「いいから黙ってろよ!」
「あ、朝なんですよ…!?人が起こしに来たら…っ」

珍しく喧しい日本の口を、上からキスして塞ぐ。
肩を振るわせて一度構えられたが、一度離して左右の頬に音を立てて2つキスし、もう一度唇へ押し当てた頃には恥ずかしさからか、突然大人しくなった。
真っ赤な顔をして、俯きながら、微妙な表情で濡れた唇に指先を添える。
キスしても一方的になって応えてくれはしない。

「…き、キスは嫌いか?」

不安に思って尋ねると、小さく首を振る。

「嫌いではないですけど…。こちらの方々と比べれば慣れませんし、拙いですから…」
「ああ…。何だ、そんなの」

思いの外浅い理由にがくりと肩を落とす。

「そんなのいいって。…ほら」
「ぇ、あ…」

日本の顎に片手を添えて薄く唇を開かせる。
そのまま改めて顔を寄せて触れるだけのキスをすると、おずおずと熱い舌先が迷いながら口内へ入ってきたので、絡み取って軽く引っ張ってやる。

「んっ…」

痛くはないと思うんだが、慣れない感覚なのか、たかがキスだけで両肩を上げ、自然と身体が前のめりになってきた所を腕を回して抱き締めてやる。
朝の日本の体温はかなり低い。
…あー。
このすっぽり収まる感覚が癒される…。
暫く抱き合っていたが、隙を見て日本がこっそり顔を上げた。

「…あの、本当になさるおつもりですか」
「やる」
「…」
「覚えてないんだよ俺は!昨日の俺ばっかいい思いしやがって腹立つ!俺昨晩お前に何したか言えよな!同じことしてやるっ!」
「し、知りませんよ…!」

日本がぶんぶんと首を振る度にしゃらしゃらと金属音が響いて何か…。
耳に悪い。

「英国さんが晩酌の席で熱いといって服を脱ぎ始めたので、酔って眠ってしまう前にお部屋にお連れしようと思っただけで。人様のお家を勝手に歩いてしまって申し訳ないとは思ったのですが…。お酒を飲まれた時の露出癖は伺っていましたから」
「う…」
「何とかベッドにお運びした所で…その。一緒に寝ようとお誘いを受けまして…。お断りしましたらこれが…」

首から下がるロザリオを見下ろし、日本が息を吐く。

「…わ、悪い。…これほんっといい加減に巻いたんだな。ぐちゃぐちゃで訳分かんなくなってる」

日本を抱いたまま片腕を伸ばしてベッドヘッドへ繋がっているチェーンを弄ってみるが、適当に結んだお陰で返って解くのが難しそうだ。
肩を竦めて日本へ視線を下ろす。

「それで?」
「え…」
「だから昨日。触られたってさっき言ってただろ」
「…。…あ、いえ。先程のは冗談でそのまま寝…っ!」

ちょっとした冗談のつもりで手を添えていたチェーンをぐいっと引いてみた。
そこまで強く引いたつもりはなかったが、思ったより緩みはなかったようで、日本が首を横に引っ張られ一瞬だけ苦しげに顔を顰めた。
慌てて速攻で謝ろうとしたが…。

「ぁ…」
「…」

日本が困惑した表情で上目遣いに俺を見たもんだから、理性がどこかに…。
チェーンを持っていた片手でそのまま緩みを巻き取り、あまり余裕なくぴんと鎖を張る。

「それで?」
「…あ、あのイギリスさ」
「いいから言えって」
「…。…着物を…されて。…少し」
「具体的に言うとどのへんだった?」
「い、いえ。ですから、知りませ…!」

言い淀む日本の横でチェーンを巻き取った手を高くする。
俺に寄りかかって座っていた日本が、鎖に引っ張られて俺から背を離し、苦しげに顎を上げる。
頬にキスして項に額を寄せた。

「同じことやり直しさせてくれよ。…な?」
「っ…。ぁ、」

沈黙が続く分だけじわじわ鎖を絡め取ってきつくしてやったがなかなかしぶとく、やっとのことで日本は首を縦に振った。

Drunken Magic



白くて細い身体を一度抱き上げ、丁寧にシーツの上に置いてやる。
…また少し余裕を持たせてやった鎖を手放すことはしないけど。
さっきからしっかり握って半身を覆っている布団をできれば剥がしたい所だが、あまり強引にやって本気で怒り出されると嫌なんでまあまだいいかと思う。
さっきと同じ量だけキスして、日本の言葉通り片手の指をお互い絡めてから首筋を伝って下におり、胸へ音を立てて口付ける。
…まあ、確かに指絡めんのは俺の癖でもある。
唾液で湿らせ、前歯で軽く噛んで弄ってやる度に日本がやんわり俺の肩を押し返すが、鎖の音を鳴らして存在を思い出させるとそれも止む。
余程さっきが苦しかったらしい。
後で謝らなくちゃなー…と思いながらも舌先で突起を押し潰す。

「っ…。も、もういいです、から…。そんなに、長い時間では…」
「…何かあれだな。捻りがなくて…。蜂蜜でも持ってくるか?」
「結構です…っ」

涙目で日本が叫いたので、渋々顔を離して慰めがてらまた口にキスする。
少しずつだが、応え方を覚えたらしく、向こうから少し舌を絡めて離した。
愉しくて自然と緩む頬を隠さず、こつんと額を日本の額に当てる。

「で?次は」
「え、ええ…と…」

さっと視線を反らされ俯かれたが、ぐりぐり額を押し当てながら恥じらう反応を楽しんどく。
何かいいなあ、こういうの。
俺の周りじゃ結構開けっ広げだし…新鮮なんだよな、日本の反応は。
なかなか言い出せず参っている様子だったんで、助け船に上からキスをしながら布団の中へ片手を滑り込ませ、日本の腿へ手を添えた。
ゆっくり上へ這い上げてく。

「た、例えば…だな。…こういうこととか」
「…っ!」

…まあ、朝だしな。
形を成してる下を緩く握ると、大袈裟なくらい日本が跳ねた。
目を固く瞑って両肩を上げ、片手で自分の口を押さえる。
俺の手を拒む訳じゃないが、両脚を閉じて震える姿が妙にぞくぞくしてくる。
上下に軽く扱いた後、掌を先端に添えて擦りながら裏筋を擽ると、気に入ったのかくしゃりと眉間に皺が寄った。
逃げようとでも思ってるのか、身動ぎしてシーツにも皺が寄る。

「っ…ぅあ…」
「…昨日よりはいいだろ?」

まあ、覚えてないけどな…。
酔った勢いよりは意識して抱いた方が絶対いいと思うし。

「日本…ほら。指」
「…」

段々朦朧としてきたらしい。
ノってきた様子にほっとしつつ、絡めていた指を解いて人差し指と中指を唇に添えて突っつく。
薄く開いてた口の中に指を入れ、熱い舌の上に乗せる。
湿らせるんだよ、と言ってやると、鈍い舌遣いでおずおずと俺の指を日本が舐め濡らして行く。
それに合わせて下も扱いて、上下から卑猥な音が寝室に反響した。
手を緩めないまま、覆い被さるのを止めて日本の横に寝っ転がる。
筋裏がやっぱり苦手らしく、撫でると口に入れている指に歯が何度か立った。

「噛むなよ」
「ふ…。ん、む…」

苦笑しながら顔を細い首へ寄せてキスする。
日本もかなりぼんやりしてきたみたいだが、こっちだって結構もう神経が茹だってる気がする。
このまま俺のも銜えて欲しいなとも思うが…。
指2本で結構苦しそうだし、時間をかけて慣らさないと辛いだろう。
まあ他の奴らなら虐め半分に無理矢理やってもいいが、日本には…嫌われたくないしな…正直。
二の足を踏む所で妙に好きなことを再認識しつつ、1人で内心照れる。

「も、もういいぞ…」
「あ…はい…」

日本の口から指を抜いた所で、横から一度力を込めて抱き締めた。

「…えーっと、だな。昨日は、その…。最後までやったのか?」
「……。…逃げられませんでしたので」

さっと顔を背け、間を置いて、ぽつり…と日本が返す。
ぁああぁあ…。

「…あー。…悪い」
「いえ…。…。…あの、本当に覚えていらっしゃらないんですよね」
「だ、だからその分今返してやるっつってんだろ!」
「…!」

もともとあんまり離れてなかったが、腰に腕を回して引き寄せてから後ろにさっき日本が銜えていた指をゆっくり差し込む。
やっぱ痛いのか、日本が振るえて俺の胸に指先と額を添えた。
中で押し広げる俺の指に呼応して潤んだ目で唇を噛みしめる様子が堪らなくて、見られるの嫌なんだろうなと思いつつ思わず凝視しちまう。
後ろが何とか溶け広がった所で、指を抜いた。

「…向こう向けよ」

俺に縋っていた日本の肩を軽く押して寝返りを打たせ、背中にキスする。
そこで漸く邪魔な布団を払い除け、横向きになていた日本の片腿を背後から掴んで持ち上げ、少し勢いをつけて日本の中に入り込んだ。

「いっ…!」
「あ、悪い…。でもこうしないとなかなか入らないし…」

痛みに顔を顰めた日本を抱く片腕で、そのまま痛みを和らげようと気遣いながら反り立った前を撫でていく。
1人でぎゅっとシーツを握った手が健気だ。
持ち上げている腿を揺らすと、それに引っ張られるようにして小さな日本の身体も揺れ動く。
軽いんでかなり揺さ振りやすい。
すっかり忘れていた首のロザリオが小刻みに音を立てて興奮がやたら煽られ、色々と止まらなくなってくる。
どの辺りがスポットなのかと適当にがしがし弄っていたが、やがて見つけて繰り返し突くと可哀想なくらい日本が捩れて乱れるので見惚れてる間にかなり辛いことをさせた気がする。
優しくしてやりたいんだが、どうも歯止めが…。

「ふ…。ぁ…っギリ、スさ…っも…っもうや」
「…」
「ぅ、っあぁ…っ」

低い声の嬌声に頭に靄がかかってくる。
…狭くて気持ちがいい。
本当に抱き枕の感覚でしがみつくみたいに背中から絶えず抱き締めた。
これはもう俺のだとか、誰にも触らせないとか、ずっとこうしてたいとか…そんな甘ったるい独占欲丸出しの感情と台詞しか出てこない。
ので、迂闊に口を開けなかった。
兎に角今の幸福と、日本の中に俺を刻みたくて外したふりをして痛みを与えたりもした。
啼いて身を捩る日本が可愛くて、項に顔を寄せて首筋に吸血鬼みたいに歯を立てる。

「っ、ー…ッ!!」

歯を立てた瞬間日本が顎を上げ、声にならない悲鳴をあげた。
触れていた掌に熱い体液がかかり、同時に日本の中に入れていた俺のものが一際強く締め付けられて、俺も俺で吐き出す。
それでも名残惜しくて…滑りも良くなったし、そのままもう一度収縮したその場所へ刺激を与えると、日本が慌てて背を反らして俺を振り返った。
その肩に噛み付いてやる。

「っ…ちょ…っと、待っ…。ぁ、や…っ嫌、で…」
「悪い…。これで最後だから」
「こ、こんな…卑猥、な…っ」
「お前が煽るからだろ…!」
「あ、煽っ…」

何か言われる前に強引にキスして黙らせ、そのまま口を塞ぐ。
自分は大して動かず腕で一方的に日本の身を揺さぶって刺激を生む。
朝のちょっとした戯れのつもりがえらい時間がかかった。
何度目かの射精後に漸く落ち着いて、気怠さを堪能してから、日本の肩へキスする。

「ん…。あー…やばい…。思ったよりすっ飛んだな…」

汗で軽く湿った髪を掻き上げながら身を起こした。
時計を見ると…って、まだ8時か。
まあ、妥当な起床時間だな。
片手をシーツに付いて、日本のご機嫌を伺う。

「えーっと…わ、悪いな日、本…」
「……」
「あ、あれ?おい??」

反応が無くて顔を覗くと、気を失っているのかぐったりシーツに横たわったまま目を開けない。
軽く肩を叩いたがやっぱり起きず、白い裸体にてんてん残るキスマーク。
…。

「…起きたらキレるかもな」

い、いやでも一応同意の上だし…。
今日一日は振り回すの止めようと思っていたが、スタートからこれじゃ止めようも何もないかもしれない。
…頼むから嫌わないで欲しい。
こっちはかなり真剣に好きなんだが…何だかいまいち伝わってないような気がするし。
…ぶっちゃけ心のどこかでちらっとこのままでもいいかと思ってもいたが。

「…チェーン、切っとくか」

寝起きの日本の機嫌を取っておかないとな…。
…欧州のドンが何でこんな島国一匹にと思わなくもないが、惚れちまったもんは仕方ない。
俺より年上のあどけない寝顔を一撫でしてから額にキスして、スラックスに片足を通してペンチを取りに部屋を出た。


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